文豪や編集者に愛されていた、
お茶ノ水駅近くの「山の上ホテル」が休業となった。
再度作り直すのかどうか、まだはっきりしていないようだ。

私は戦後8年たった1953年頃から、このホテルに通うようになった。

最初は作家の檀一雄先生の作品をいただきに行ったのだが、
そのうち、週に1回ほど、呼ばれるようになっていった。
自分の仕事ではない、他社の書き下ろしを手伝わされたのだ。

それは当時テレビドラマにもなった『火宅の人』(新潮社)
という作品に出てくる、先生の愛人女優との世話を頼まれたのだ。
まだ22歳の新人編集者が、世間に隠された愛の巣を探しに歩いたり、
いまの人の仕事ぶりでは、考えられない仕事だった。

あまり長い間、ホテルに2人で逗留していたのでは、
流行作家といえども、資金がつづかなくなってきたのだ。

私は山の上ホテルに行くたびに、
天ぷらのカウンターでおいしい天ぷら料理を食べられたのが、
のちに「食通」の1人に数えられるようになったのだが。

このホテルは天ぷらで一時期、有名になったのだが、
そのとき働いていたのが、近藤文夫氏で、いまではミシュランの常連だ。
しかし近藤さんは私よりあとに職人になっている。

このホテルには、文豪が作品を書くとき使った、
座布団から文机、テーブル、ペンなど、いろいろ揃っており、
私はのちに作家になってから、ここの常連になったのだが、
多くの文人が使った文机を使わせていただいた。

このホテルがなくなると、もうホテルの楽しみはなくなるだろう。
ほとんどは、外資系の超高値ホテルに切り換わっていくからだ。

昔を知っている人には、寂しい時代になってしまった。


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